父親にとっての不登校(Tさんの場合)

こんにちは。
こころのそえぎ(福本早穂)です。



今日は、不登校の子どもに対する
Tさんというお父さんのかかわりについて
お話したいと思います。

Tさんは、地方都市の中小企業の会社員。

最近、小学校4年のF君が、
家を出たけれど、
学校に行っていないことがわかりました。

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お母さんは、パートに出ているので、
F君が家を出た後、
帰っていることに気づかなかったのです。


学校からお母さんの職場に電話があり、
初めてわかりました。


そうなるまでに
F君は朝が起きにくかったり、
支度に時間がかかって遅刻したり、
忘れ物が多くなったりして、
先生からしばしば注意を受けていました。


行き渋るF君を
お母さんはなんとか学校に行かせようと、
𠮟ったり、時には
なだめたりしながら行かせていました。

でも、
F君はよっぽど学校に行くのが、
つらくなっていたのでしょう。


途中の公園でしばらく過ごした後、
おかあさんがパートに出たころに、
こっそり家に帰っていたようです。



Tさんは、F君が登校する前に
出勤するので、
近ごろのF君の様子がおかしいことに
気が付きませんでした。


F君のことを知らされて、
Tさんはとてもショックでした。

<夫婦間のギャップ>
夫婦で学校に行き、
教頭先生や担任と話しあいました。


そのさいに、教頭から
「お父さんも厳しく彼に言ってくださるように」
と言われ、
自分が甘い父親だと
言われているように感じました。


ある日、Tさんは
会社に遅刻することを告げて、
F君を車に乗せて
学校に連れて行きました。


学校の門の前で、
教頭先生と担任の先生が待っていました。

F君は顔面蒼白になり、
うなだれて車から出ようとしません。


Tさんは、先生が待ってくれている手前
なんとしても子どもを
行かせなければと焦って
はじめてF君に手をあげていました。
そして
車からひきおずり下ろすようにして、
先生にF君を預けました。




その日から、
F君はまったく学校に行けなくなりました。
だれとも口をきかなくなり、
ご飯をたべられなくなりました。


Tさんが帰ると、
自分の部屋にひきこもってしまいます。


お母さんは、とても心配で、
教育相談に行ったり、
親の会に行って、
ちょっと先をいくお母さんの話をきいたり、
不登校関係の本を読んでみたりして、
F君の状態を理解しようと
動いていました。


そして、
Tさんにも聞いてきたことや
本で読んだことを
折に触れて伝えていきました。


Tさんは、それでもなかなか
F君が学校に行けないことを
受け入れられませんでした。


職場では、中間管理職として、
新しいプロジェクトを任され、
若い部下をがんばらせる立場なのです。

家に帰ると、
全然がんばらなくなった
わが子を見なくてはなりません。


いくら学校でつらいことがあるとはいえ、
行けなくなるという状態が
どうしても理解できませんでした。


<お父さんが変わるとき>
妻のU子さんは、
「あなたが変わらないと、
Fはいつまでたっても、元気にならないのよ」
と訴えます。

そして、
「一度いっしょに親の会に行ってほしい」
と、言われました。

U子さんの話から想像すると、
自分は子どもに理解のない
父親と思われて、
非難をあびるだけではないかと
Tさんは二の足を踏んでいました。

でも、U子さんが強く勧めるので、
一緒に行くことにしました。



親の会では、
不登校経験者の親である
世話人さんが待っていました。

「お父さんが来てくださることなんて、
あまりないのに、
よく来てくださいましたね」
とメンバーのみんなが歓迎してくれました。


世話人さんやほかの親の話をきいているうちに、
今のF君が
一人で悩みを抱えている状態や、
学校に行っていないことへの罪悪感、
こんな自分はダメな奴だという
自己否定の気持ちで
いっぱいになっていることが、
感じられてきました。



やがて
「父親として、ぼくに何ができるんでしょうか?」
とTさんは尋ねていました。


「息子さんが小さいころ、
どんなことして遊んでました?」
と一人のお父さんが聞きました。


Tさんは、F君が 小さいころ、
夏になると、キャンプに連れて行ったことを
思い出しました。


「また親子でキャンプに行かれては?
焚火をいっしょに眺めているだけでも
息子さんの気持ちが慰められるし、
家にいるときより、気持ちが解放されて
いいと思いますよ」
と勧められました。


<父子の関係を取り戻す>

連休に、Tさんは久しぶりにF君を誘って
キャンプに連れて行きました。
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U子さんが、F君にTさんの思いを
伝えていたのでしょう。
F君はしぶしぶでしたが、
ついて来ました。


その夜、テントをはって、
二人で焚火を挟んで向かい合っていました。

あいかわらず、F君は黙って下を向いています。

Tさんは、
どう声をかけていいか分からず、
ためらっていました。


でも、小さくなって沈んだ顔で
うなだれているF君をみているうちに、

なんとかして元気づけてやりたいという
父親の気持ちが
言葉になって出てきました。


「学校に行ってなくても
りっぱな大人になっている人はおる。

F、なにも気にしなくていい。
家にいたらいい。
お前には、おれがついてる。
心配するな。」

<F君の変化

U子さんは、家に帰ってからの
F君の変化に驚きました。

ずっとうなだれていた子が、

日を重ねるごとに顔をあげていき、

やがて
食欲も出てきて、
笑顔を見せてしゃべるようになりました。


「主人のはげましで、あんなに変わるなんて」
とU子さんもうれしそうでした。



(Tさんの例は、複数の相談事例を総合したイメージです。)

<父親の影響は意外と大きい>

お父さんの影響は、
父親自身が思っている以上に大きいと思います。


父親はたいてい、
子どもたちの登校時間より早く出勤し、、
帰宅も遅いですから、
子どもと接する時間が少ないことが多いですね。


子どもは、登校する時間には、
とても苦しんでいますが、
その時間を過ぎると、
らくになって、ゲームなどしています。


夜お父さんが帰宅するころには、
元気そうに見えます。


でも、朝になり登校するとなると、
頭痛、吐き気、腹痛など
さまざまな身体症状が出てくるのです。


母親はそんな子どもの状態を
目の当たりにしていますから

また、登校させようとすればするほど、
子どもの具合が悪くなる一方なので、

学校に行かせることを諦めるのですが、

お父さんからすると、
そんなお母さんが
子どもを甘やかしているように
見えるのは、
仕方のないことかもしれません。


自分自身がつらい仕事や職場環境で
がんばっているお父さんには、
子どもの不登校を受け入れ難いのも
無理のないこととも思います。


でも、
いつまでもお父さんが
子どもを批判的に見ていると、
リストカットや摂食障害、
強迫性障害など
子どもに精神的な二次的症状が
出てくる場合が多いと
経験上から言えます。


そういうお父さんほど、
母親の子育てを責めて、
ますます子どもの罪悪感を
増幅しています。


<夫婦で問題にむきあって>
お父さんの職場環境や仕事の都合によって、
夫婦で一緒に
カウンセリングや親の会に行くことは
難しいかもしれません。


でも、妻の意見を尊重し、
子どものつらさを理解して、
一緒に考えてくれるお父さんですと、
まちがいなく、
子どもは元気になっていっています。


子どもの不登校を通じて、
お互いの関係が深まるか
理解しあえない関係になるか

それまでの、
夫婦の関係が、
子どもの不登校をきっかけに、
よくも悪くも
露呈してくるようです。



こころのそえぎには、
ご夫婦でお越しくださる
親御さんもいらっしゃいます。


子どもの不登校が
ご夫婦それぞれの人生にとって、
貴重な体験になるといいですね。



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少し余裕をもって
子どもを見ることができます。



<参考図書>


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